毎回、任せた仕事の8割を差し戻される新人がいたら、あなたはその人を「向いていない」と判断するだろうか。
実はこれは、私たちの会社でAIに起きたことである。最初は私たちも、AIの出来を疑った。ところが原因は、AIの能力ではなく、任せる側の「渡し方」にあった。
結論を先に言うと、任せる前に渡すべきものは3つある。「基準」「見本」「やってはいけないこと」だ。中身は後半の記事で書く。この前半では、なぜそう言えるのかを振り返る。
5回のうち、4回がやり直しだった
自社では、翌日の会議の資料づくりをAIエージェント(指示を受け、自分で手順を組み立てて動くAI)に任せている。直近7日の記録を数えると、AIが実際に資料を作った5回のうち、4回が一度つくり直しになっていた(自社計測)。8割である。
ただし、会議に間に合わなかった例は出てこなかった。
落ちたのは「能力」ではなかった
4回の理由を読むと、AIが「何を書くか」を取り違えた回は1つもなかった。中身は合っていた。落ちたのは、合格の基準に届かなかったからだ。
弊社ではAI社員に愛着を持つために、歴史上の人物の名前を役割ごとにつけている。ここだけ、その名前で書く。資料を作るのが「AIの信」、出来上がりを基準で落とすのが「AIの王翦」、手引きを管理するのが「AIの昌平君」である(記録をもとにした再構成)。
9月29日。AIの信は、台本を気持ちよく書き終えた。ところがAIの王翦は、これを落とした。字数が基準に届いていない、という理由だった。
信は、そんな基準があることを知らなかった。
10月4日の夜、AIの昌平君が手引きを開いた。基準は、検査側にしか書かれていなかった。信が読む手引きには、ひと言もない。
信が悪いのでも、王翦が厳しすぎるのでもない。基準を二人の間に置かなかった、仕組みを組んだ側の問題だった。
人の職場でも、同じことが起きている
新人に仕事を頼み、出てきたものに「もっと短く」と赤を入れる。赤を入れる側の頭の中には、最初から基準がある。ただ、頼むときには言っていない。
試験の範囲を教えずに試験を受けさせ、落ちたら「努力不足」と言う。相手が人でもAIでも、これではやり直しは減らない。では、何を渡せばよかったのか。続きは後半の記事で書いている。
※本記事の呼び名は、当社の社内でのあだ名であり、特定の作品や団体とは関係がない。


