2026年10月19日、製品の取扱説明書や保守マニュアルを、社内のAIが正しく答えられる形に整える代行サービスの提供開始が発表された。マニュアル AI 読み込ませる、と調べている担当者に先に答えを書くと、読み込ませる前に「正解つきの質問の一覧」をつくり、AIが正しく答えた数を数えることだ。理由を、発表文の説明と、当社がAIの「読み」で一度つまずいた記録から書く。
読み込ませただけでは、表が崩れ古い版で答える
発表文によると、WordやPDFの原本をそのままAIに読ませると、表は行と列の対応が崩れ、図は抜け落ち、似た機種や古い版の記述をもとに答えてしまうことがある。このサービスは、原本を目次の項目ごとに区切り、表は表のまま、図には説明を添え、機種・版・言語の印と原本のページの出典を付けて登録する。登録後は読み戻して原本と照合し、よく受ける質問を正解つきで用意して、原本をそのまま入れた場合と整えた後とで、正しく答えた数を比べて返すという(出典:同社プレスリリース、PR TIMES)。
同じ発表文が引く情報処理推進機構の調査では、AIの用途を答えた1,191社のうち、最も多い「文書・音声の要約・翻訳・校正」は82.5%で、「ナレッジ管理・共有」は26.3%にとどまる(出典:IPA「DX動向調査」2025年度。同プレスリリースの注記より)。
当社も、AIの要約で項目の数を取り違えた
2026年10月15日、当社は行政の注意喚起を入口に記事を書いた。このとき出典のページはAIに要約させてから照合していた。その結果、原文では5項目ある対策を「4つ」と書き、対象の範囲を示す語も落とした。記事を検査する別のAIに2回差し戻され、3回目でようやく通っている(出典:当社の記事制作記録、自社計測)。
それ以来、出典は要約ではなく原文を取り、記事に使う数字と語を原文の該当行に1つずつ当ててから書く手順に変えた。AIが読み違えたこと自体より、照らし合わせる相手を決めていなかったことが原因だったと思われる。マニュアルも同じで、正しい答えが手元に無ければ、AIの答えが合っているかを誰も判定できない。
読み込ませる前に、質問の一覧をつくる
だから、先に用意するのはツールではなく質問の一覧だと私たちは考えている。問い合わせの担当者がよく受ける質問を、正解と原本のページつきで書き出す。読み込ませた直後にその質問をAIに聞き、正しく答えた数を数える。表や版を整えたら、同じ質問で測り直す。数が増えなければ、整え方が合っていない。
たとえば製造業で、機種ごとに版が分かれる保守マニュアルなら、古い版の機種について聞く質問を1つ混ぜておくとよい。似た記述で答えてしまう弱点が、最初の測定で見えると思われる。
次の一手は、質問を書き出すこと
当社はこの代行サービスを試しておらず、整えた後に正しく答える数がどれだけ増えるかも確かめていない。それでも、最初の一歩は外に出さなくても踏める。問い合わせの多い質問を、正解と原本のページつきで書いてみる。外に任せるか自社で整えるかは、その一覧を見てから決めても遅くない。


